Time Limit ~税理士は今、何をすべきか~ 【第4回】 クラウド会計は会計事務所ビジネスモデル転換の「鍵」
これまでのコラムで触れたように、AIの発展が税理士業界に大きな影響を与えることとなるのはほぼ間違いなく、税務顧問報酬は今後も下がり続けることが予想されます。
そのために、従来型の会計事務所では早晩ビジネスモデルの転換に迫られるはずです。
前回のコラムでは、新しいタイプのBPOサービスが会計事務所のメイン事業になりうることを解説しましたが、このような収益性を改善するための高付加価値業務のウェイトを高める取り組みを行わなければ、生き残りは難しくなっていきます。
現時点で、会計・税務の業務ウェイトが高付加価値業務のウェイトを上回っているのであれば、これが逆転した状態になることが理想的です。
しかしながら、だからと言って会計・税務を軽視することはできません。
なぜなら、会計・税務はマーケティング面では依然として重要であり、ここで集めた顧客をいかに高付加価値サービスの顧客に転換できるかが会計事務所のビジネスの”肝”となるからです。
ですから、たとえ低単価で収益性が低かったとしても、会計・税務の顧客の流入を減少させることは得策ではないのです。
では、会計・税務はどのように業務を行っていくべきなのでしょうか?
まずは、会計・税務の業務をこれまで以上に効率化できるような業務体制を構築していく必要があります。
仮に、現在の税務顧問報酬の平均単価が半分になったとしても、何とか採算がとれるレベルまで、徹底的に業務の効率化を進めていきましょう。
さらに、現在多くの事務所が提供しているような、担当者任せの総花的な税務サービスではなく、サービス内容を限定し、必要最低限のミニマムなサービスを検討するところから考えなおす必要があるでしょう。
もちろん、すべての顧問先をこのようなサービスに完全に切り替えるというわけではありません。
現在の顧問先の中でも業務工数に対して十分な報酬が得られているような場合は、あえてそのようなサービスに切り替える必要はありませんし、新規顧客でも優良な顧問先になる可能性があるのであれば、従来通りのサービスを提供することもできます。
ミニマムサービスは、あくまでも新規顧問先の獲得件数を維持するために、マーケティングのオプションとして機能する税務サービスという位置づけで良いのです。
クラウド会計へのシフトは必須
このようなサービスを構築するうえで、クラウド会計へのシフトは重要な戦略となるはずです。
ミニマムサービスを検討するうえでは訪問監査は極力減らし、オンライン面談とクラウド会計によるリモート監査をデフォルトのサービスとすることで、移動にかかる時間を最小限にすることができます。
記帳代行を行わなければならない場合でも、資料回収のための訪問や郵送/FAXなどは行わず、可能な限りデータで回収する形をデフォルトのサービスとすれば良いでしょう。
このような体制を作るうえでもクラウド会計の金融機関連携やクラウドストレージ機能が大いに役立つはずです。
さらに記帳代行では、ベンダーが提供する記帳サービスを取り入れることで、工数を大幅に削減することもできます。
記帳サービスは、人件費と自社のベテラン職員の時間当たりの処理件数のみを考えると一見割高にも思えますが、採用コスト、教育コスト、使用する備品(PC等)、休憩や間接作業時間などまでを考慮すると、決して高いものではありません。
加えて、職員の退職などによる業務への影響を想定すると、むしろこのようなサービスを利用した方が、安定した経営ができるのではないでしょうか。
また、時流としてもクラウド会計は小規模事業者のファーストチョイスになりつつあり、ここからの流入を逃すことはマーケティング的な視点でも損失となります。金融機関やOA機器商社など、クラウド会計の販路は拡大しており、顧客がより接点の強いルートからクラウド会計を勧められ、採用するケースが増えるでしょう。
新規顧客の獲得だけでなく、記帳代行からのアップセルとしてBPOサービスを提供するうえでも、クラウド会計をベースに業務が出来上がっていることはプラスとなるはずです。クラウド会計はERPシステムとして利用できるよう設計されているものが多く、バックオフィス業務全体を完全オンラインで行うことも十分可能です。
事務所・顧問先の両方のデジタル化をサポート
このような事務所のビジネスモデル転換のためには、現在よりも圧倒的にデジタルに強くなる必要がありますし、ビジネスモデルも一から作り上げていかなければなりません。
中小企業DX推進研究会では、このために必要なさまざまな情報を共有しています。
これまでの研究成果や、顧問先のデジタライゼーション(業務プロセスのデジタル化)支援に必要なノウハウやツールをオンラインで公開していますので、会員となったその日から、数多くの情報を手に入れることができます。
さらに定例勉強会や分科会では、他の事務所の取り組みや最新のツールを研究した情報をシェアしていきますので、毎月新しい情報を入手することができます。
是非、研究会にご参加いただき、私たちとDX推進に取り組んでいきましょう。
Time Limit(終)