Time Limit ~税理士は今、何をすべきか~ 【第3回】 高収益事務所のBPOサービスは何が違うのか?

「TIME LIMIT」第2回では、バックオフィスBPOサービスの将来性や、AI時代でも事業継続が可能である点について解説をしました。それでは、2023年現在、このようなBPOサービスは会計事務所でどのように提供されているのでしょうか?

会計事務所が提供しているBPOサービスは、積極性の観点から大きく二つに分けて考えることができます。消極的BPOサービスは関与先からの依頼によって、既存業務の延長として事業がスタートし、そのまま惰性で続けているようなケースです。一方で、積極的BPOサービスは戦略的な事業として位置づけられており、高い利益率を上げられるようにITをフル活用したビジネスモデルを構築しています。

多くの会計事務所が提供しているBPOサービスは消極的BPOとなっています。理由は明らかで、人材が不足している昨今では関与先の経理担当者の退職によって、経理が回らなくなるといった事案が多く発生しているためです。事務所としても事業化できる可能性を感じてはいるものの、積極的なサービスまで昇華できずに、なんとなく続けてしまっているというのが現状ではないでしょうか。

このような形態で運営されているBPOサービスは、今後のAI時代にフィットできない可能性が高いと言わざるを得ません。その理由は二つあります。

①利益率が改善されないから

関与先の業務の方法をそのまま引き継ぐ形で受託すると、業務内容においても使用するツールにおいても標準化が行われません。これでは、AIの発展によって業務効率が飛躍的に改善できる可能性が高まったとしても、すべての関与先に一律に適用することができません。また、業務フローの設計やマネジメントができるスキルがなければ、AIを活用した業務フローに変革すること自体ができません。これでは、業務効率の改善は望めず、利益率は上がらないままとなる可能性が高いでしょう。

②小規模事業者の依頼が頭打ちになる可能性が高いから

消極的BPOでは、既存の関与先が主な顧客となっているはずです。その中でも、経理担当者の採用が困難な小規模な事業者であることがほとんどでしょう。このような事業者は時間の経過とともに徐々に減少し、一定の時点で頭打ちとなることでしょう。なぜなら、これから創業していくような若い経営者は、自身でITツールを活用してバックオフィス業務にほとんど人的リソースをかけることなく、事業を行うことが可能となるからです。こうした状況となれば、必然的に案件数は減少し、顧客獲得が難しくなっていくに違いありません。売上を確保するうえでは中規模以上の事業者の業務に対応できるかが重要ですが、後発でそのようなマーケットに参入したとしても競争は非常に厳しいものとなるはずです。

これらの理由から、現在消極的BPOサービスを実施している事務所は、早い段階で積極的BPOを実施できるよう、サービスを見直す必要があります。
なお、積極的BPOを実施している事務所は、現時点でも高い収益性を確保できており、2023年の現時点から事業化に取り組めば、先行者利益を得ることも十分に可能でしょう。中小企業DX推進研究会に参加いただいている会員でも、このような戦略的なBPOサービスで実績をあげられている事務所が現れ始めています。

バックオフィスイノベーションDayでは、積極的BPOサービスで急成長中の事務所の事例をご紹介します。

さて、このようなBPOサービスを提供できるようにするには、どのような準備が必要なのでしょうか。ITを運用できる個別サービスの知識はもとより、これらのITツールを業務にフィットさせ、全体最適をマネジメントできる「業務設計スキル」が求められます。積極的BPOによって高い収益性を確保している事務所は、このような業務設計からサービス提供を行っており、顧客の手間が削減されるような適切なITツール活用を行えるだけでなく、受託する業務フローの標準化や自社の業務の効率化までを実現しています。これにより、案件単価の向上と業務コストの削減が同時に達成され、高い生産性を維持できるという仕組みになっているわけです。

第4回へ続く