第9回 座談会レポート ~ それ、ITスキルアップだけで解決できる? ~

座談会は会員の皆さま同士の情報交換によって、DX推進の理解を深めていくことを目的としたコンテンツです。

このレポートでは座談会の様子を抜粋しご紹介いたします。


2023 年 8 月 25 日 (金) 16:30 ~ 18:00 開催
テーマ:それ、ITスキルアップだけで解決できる?


顧問先へのDX推進でシステムやデータを駆使したサービス向上が進む一方で、事務所の規模や見据える未来、考え方によってIT人財の獲得や育成、個々へのスキルやルールの浸透方法などのITに関連した課題は、どの事務所でも抱えていらっしゃいます。

第9回では、パネリストとしてご参加いただいた会員事務所さまから事前にトークテーマを提出いただき、各事務所での対応状況や見解を 「〇・✕・△」 でお答えいただきながらお話を進めていきました。

ゲストは、税理士法人 広瀬さま、税理士法人 りんくさま、税理士法人 YFPクレアさま、そしてセブンセンスグループの4社7名の皆さまにご参加いただきました。

◆ITの最新情報収集はだれが・どのように、対応していますか?

各種ソフトのエラーやウイルスに関する情報からChatGPTのように世の中で使われ始めているツールなど最新情報の収集をするのは、どの事務所でも特定の担当者が置かれていないということがわかりました。興味を持ったひとや、所長からの質問に対応した者が調査を担当し、グループウエアやチャットを通じて情報を共有することが多いようです。

◆お客さま向けに発信する情報の内部統制について

お客さま向けの情報発信においても、転載可能なニュースレターを使用して発信する事務所や、各所から聞かれたことをそれぞれが調査・回答している事務所もありました。後者では同じ内容を別々に対応していることも想定されており、情報の蓄積場所を整備する必要性があるだろうとのご意見もありました。

また、コミュニケーションツールも、メールであればBCCを使って共有するルールがあるものの、チャットの場合は、そのチャットへ参加している者のみが内容を知ることとなっている状況にあるようです。さらにそのチャットもお客さまごとに異なるチャットツールを使用しているため情報の集約が困難な要因になっているのだそうです。

◆ITツールの選定、導入対応は専任者が決まっていますか.. ?

これまでオンラインストレージやチャットツールなど、全社で使うツールに関しては、検証から導入までをIT専任チームが対応したとの回答もありました。

顧問先からツールの選定を求められることも会計事務所ではよくある事案だと思われます。しかし製造業における生産管理ツールの場合では、ツールの種類や対応の幅が広く、継続してのフォローアップが難しいという共通のご意見も挙がりました。

お客さま側から 「このツールを導入したい」 という特定ツールの依頼を受けた場合には、該当ツールの提携担当者へ繋いで、対応してもらっている場合もあるようです。

顧問先のツール選定~導入対応となると、請求書発行や勤怠管理、給与計算といった種別ごといくつものツールのメリット・デメリットを網羅して、提案できる人が必要になり、リソースや時間など含むコストの観点からも、事務所内で完結するには難易度が高いとの声もありました。

◆IT担当者には資格手当の支給や、査定評価対象項目はありますか.. ?

IT担当者は税務顧問の担当者と比較して、獲得顧問数や担当先件数のような数値で表せない業務が主体です。日常的なパソコンのトラブル対応や、ツール整備などでは売り上げを直接生み出しにくく、評価項目やインセンティブは設定されていない事務所が多そうです。

またお客さまの対応や新規開拓で売り上げ獲得へ集中してしまえば、所内改善がおろそかになってしまいます。事務所内の改善が進むことで業務効率向上へ繋がり、生産性・収益性を高める役割もあるということに関して、経営陣の理解を得ていくことも大事な点となりそうです。

さらに、各種機関が実施しているIT関連の資格試験は多くあります。受験費用の補助や支給を行う事務所もある一方で、資格を保有することを採用条件とする事務所は少ないようです。

◆ITスキルがある人を採用するために実践していることとは.. ?

IT専任の採用は、退職に伴う人員補充や随時増員する目的での採用など、事務所の規模や方針に応じ異なります。自社での採用以外に外部委託によって、所内から顧問先まで対応されている事務所もありました。

ITスキルは多岐にわたり、プログラミング言語やハード・ソフトなど対応できうるスキルは広範囲です。会計事務所の業務にも理解があるひととなれば、さらに困難だとのお話がありました。

採用方法については各種媒体への登録のほか、理工学系の高専や大学の企業説明会へ参加したり、インターン採用の実施を取り入れている事務所もあるようです。

◆税務担当者とIT専任者、それぞれの育成・採用の工夫は?

IT専任として採用した場合でも、入社後一年間は、税務の流れを掴んでもらうために会計業務をひととおり担当してもらう手法も共有がありました。

税務担当者の採用を行う場合においても、IT知識が不足していることで起こってしまう事象もあるようです。たとえば、チャットやメールといった一般的な対応、管理システムの使用もままならないことや、ファイルが予期せぬ形で破壊、紛失されてしまうなど、これらはどの事務所でも抱えている課題のようです。

入社前テストとして、自社制作のエクセルへ仕訳入力をさせたり、SUM関数程度の関数が理解できているかのチェックを行っている事務所もありました。

このあとも、RPAのシナリオ作成についてや、対応サービスなど、各事務所の手法を伺いながら時間いっぱい盛り上がり本会を終えました。

研究会では、今後もさまざまな事務所の取り組みや課題のヒントとなるテーマで勉強会の企画をしてまいります。体験会員も随時募集しておりますので、ぜひご参加ください!