SMB DX Discussion Vol.5
「DXを推進する体制作りと経営者の姿勢」
DXを推進していく上で、人材や組織作りといった部分はそのスピード・実現性を向上させる上で重要な要素となる。デジタルガバナンスコードでも「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」がDXの戦略を推進する上で取り組むべき項目として挙げられている。DXレポート2では、そのような体制の中で、「経営トップと対等に対話しDXをリードする経営層」としてCIO/CDXOの配置を促している。しかしながら、中小企業においてそのような人材を獲得し、トップと対等に対話ができるよう権限を与えることは現実的に可能だろうか。
研究会ではこれまでにいくつかの「中小企業におけるDXの成功事例」と呼ばれる企業から直接的にその方法論をヒアリングしている。そのなかで共通するのが、経営者(中小企業は同族経営のオーナー企業が多いので基本的にはその企業のオーナーでもある)がITを積極的に取り入れているかどうかという点だ。
誤解して欲しくないのは、これら経営者は必ずしもSEやプログラマーなどのような技術系出身というわけではない。単純に、ITが「好き」という人もいれば、その可能性を信じて旗振り役を行っている人もいる。
このような経営者の取り組みにおいてに共通しているのが下記の2点である。
①ITの利用に関しては自身が積極的に関与する
②ベンダーへの丸投げをしない
とくに、①に関してはどの経営者も何らかの形でその運用に関与することで、会社全体としての推進力が生まれ、DXに関して大きな影響を与えていると感じている。中小企業経営者の場合、ITの有用性は感じていても、自ら積極的にそれに触りにいくというスタンスは少ないのではないだろうか。また、せっかく導入したシステムも、経営者自らがその運用を破綻させるような行動をとっているケースも少なくない。
話を戻すと、中小企業、特に小規模の事業者ではCIOの設置を検討するよりは、経営者自らが積極的にデジタル化に関与するスタンスをとる方が現実的だ。中小企業の場合は、経営者と現場の従業員の距離が近く、「今現場にとって何が必要なのか」を経営者が把握しやすいこともその理由の一つだ。場合によっては、セカンドのポジションにいる役員などがその役割を果たす可能性はあるだろうが、やはりトップ自らのスタンスが非常に重要になるだろう。このようなスタンスをとるには、日常から様々の情報に触れ、学ぶという姿勢が必要だ。
自社のビジネスへの直接的な影響にかかわらず、最新のテクノロジーやデバイス、Webサービスを積極的に利用した方が良い。このようなものの中から、新たなアイデアや変革のヒントが見つかるに違いない。
つづく
【執筆者】
中小企業DX推進研究会
副会長 笹原佳嗣