イベントレポート 「DXトークセッション:会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~ 業務管理ツール編 ~」

2025年4月25日に開催された会員定例勉強会では 「会計事務所の導入システムの変遷を振り返る」 をテーマに業務管理ツールについて、ディスカッションを行いました。当日は4事務所の会員が、活発に意見交換を行いました。
2025 年4 月 25 日 (金) 16:30 ~ 17:30 開催
テーマ:会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~業務管理ツール編~
Contents
Q1. 現在、業務管理ツールにおいて中心として、利用されているツールを教えてください

最初の議題は、「現在、各事務所で業務管理の中心として使われているツール」 について。
各事務所で利用しているツール、そして運用方法を共有する時間となりました。
このようなディスカッションがされました📝
MyKomonを利用している事務所

MyKomonでは、税務の進捗管理はもちろん、社内の稟議書や応対状況の報告書などもまとめて管理しています。ほとんどの業務をこのツールに集約している形ですね。それから、各担当先ごとに 「どの作業にどれくらい時間がかかったか」 を日報で記録しています。

私の事務所でも、MyKomonで進捗管理を行っています。しかし、スタッフの人数が少ないこともあって、アナログな方法も併用しながら業務の動きを見える化しています。MyKomonの理想的な使い方にはまだ届いていない部分もありますが、スケジュール管理や日報の記録はMyKomonで行っていて、少しずつ従業員の意識づけを進めながら活用を広げているところです。
MyKomonとkintoneを併用している事務所

私の事務所でも、MyKomonで進捗管理と日報の記入はしていますが、MyKomonだけでは管理が難しい細かな顧客情報については、kintoneを併用しています。あわせて、業務の中で気づいた改善ポイントを記録したり、業務改善に向けた情報を集めたりといった使い方もしていて、少しずつ運用を工夫しながら取り組んでいるところです。
中小企業DX推進研究会 事務局のセブンセンスグループでは…

私たちは、もともとエクセルで顧客リストや進捗表を作成し、管理していましたが、職員数が増え分業体制へと移行するタイミングで、データベース型の管理に切り替えました。( こちらのコラム を参照)
現在は kintone や FileMaker を活用し、顧客ごとの基本情報ややり取りの履歴、業務の進捗状況などを、それぞれの業務内容に合わせたオリジナルのアプリで管理しています。
中小企業DX推進研究会 会長 山口のまとめ
多くの事務所にとって現実的なのは、「通常業務を回しながら、できるところから少しずつ改善を重ねていく」 というスタイルではないでしょうか。
その意味で、kintone のように自分たちで運用を調整しながら使えるツールは、無理なく取り組める選択肢のひとつです。
一方、MyKomon のように、あらかじめ仕組みが整ったツールに業務を合わせていく方法というのも有効です。
自由度の高いツールは作り込みすぎた結果、複雑化してしまうリスクもあるため、「できあがった仕組みにうまく乗っかる」 という発想は、効率的で再現性のあるアプローチだと言えます。
いずれの方法を選ぶにしても重要なのは、“ツール導入を目的にしない” こと。
「どう業務に自然と組み込むか」 「職員が無理なく使い続けられるか」 ──この視点こそが、業務改善やDX推進のカギではないでしょうか。
Q2. 課題やお悩み、相談してみたいこと、他事務所に聞いてみたいことはありますか?
今回のセッションでは、参加者同士でそれぞれの事務所が感じている課題や悩み、他の事務所に聞いてみたいことについて意見を交わしました。
実際にあがった声をピックアップしてご紹介します。
(1) 顧客のデータ管理を改善したいけれどツール選定が難しい

私の事務所では、大元の管理はMyKomonで行っていますが、ほかのツールでも顧客情報を使っているので、どうしても二重管理になってしまっているところがあり、データ管理とツール選定の難しさを感じます。

私の事務所でもMyKomonで管理はしているのですが、過去のデータを振り返ったり、分析したりというデータ活用というところまではなかなか進められていない、というのが現状です。

私の事務所では、二重管理となっている部分はありますが、一応、情報の切り分けはできています。
所在地や代表者の住所といった基本情報はMyKomonに、その他のパスワード系などはkintoneに、それぞれ記載する形です。
どこまでをどちらに記載するか?という線引きは難しいところもありますが、重複して記載している内容はそれほど多くないかなと感じています。

私たちは、顧客データを 「データベースに入れる情報」 と 「ファイルで保管する情報」 の2種類に分けて考えています。
基本的な顧客情報はkintoneやFileMakerに登録していますが、手書きのメモや資料などはファイルサーバー (DocuWorks) にまとめて保管しています。必要な情報が目につく場所にあることを重視し、進捗管理表などからもデータベース情報が表示されるようにして、できるだけ見落としがない仕組みを作っています。
会計ソフトに顧客管理機能が備わっている場合は、それをそのまま活用している事務所も多い一方で、そうした機能がない場合は、何をどのように管理するのかという項目設計そのものが大きな負担になるのではないでしょうか。だからこそ、業界向けにあらかじめ設計されているMyKomonのようなツールを導入するケースが多い背景には、その設計負担を軽減できるメリットがあるからこそだと考えられます。
「どのツールを選ぶか」 よりも、「どの情報を・どう整理し・どう活用するのか」 という視点を持つことが、ツール選定においても重要になると感じます。
(2) 単に入力しているだけで、情報活用まで至らずなのが悩ましい

管理する側の感覚で 「ここは大丈夫」 と判断できている場合は、ある程度は記録を取ること自体を減らしてしまう、というのも一つの考え方かもしれません。どれだけ記録しても、その情報が正しく入っていなければ意味がありませんし、活用できないのであれば、そもそも記録に時間をかけすぎないという選択もあり得ると思っています。
一方で、記録を習慣化してしまえば、そこまで負担に感じず続けられることも多いので、どちらに振るかを判断するのがポイントです。「口酸っぱく言い続ける」 というのは王道ですが、なかなかそうはいかないのが現実でしょう。
そこで私たちの事務所では、「該当のツールを通過しなければ業務ができない仕組み」 ということも大事にしています。
たとえば、作業するための会計ソフトは管理表経由でしか開けない、フォルダーがそこからしか開くことができない、といった仕掛けです。
自然とその流れを通らざるを得ない、という状態にしています。
ほかにも、ツールを使うモチベーションとなる仕掛けがあるとよりいいかもしれません。
いずれにしても、使う側が 「それを通らないと仕事が進まない」 と感じる仕組みをどのように作るか。
ここが、記録や管理を形骸化させないための大事なポイントだと考えています。
まとめ
今回の勉強会では、各事務所の業務管理ツールの活用状況や課題について意見交換を行いました。
「何のためにその管理データを生かすのか」 「そのデータをどのように採取するのか」 ということや、「業務の中にどうやって組み込むか」 「どうすれば習慣化するか」 といったツール選定以外のポイントが大切であるという視点が多く共有されました。
また最近では、AIを活用し、各自が記録した情報を自動で集約・整理する仕組みづくりに注目が集まっています。
ツールやフォーマットに縛られず、自由に入力した情報をもとにAIが進捗管理表を生成する――そんな新しい選択肢も見えはじめています。
正解の形が一つではないからこそ、これからも試行錯誤を重ねながら、それぞれの現場に寄り添った業務改善の方法を探っていくことも大切なのだと感じます。