イベントレポート 「DXトークセッション:デジタルトランスフォーメーション (DX) ってなんだっけ? ~ 会計事務所のDXお悩み相談室 ~」

11月29日に開催された会員定例勉強会では「デジタルトランスフォーメーション (DX) ってなんだっけ?」をテーマにディスカッションを行いました。当日は3事務所9名の会員が、各事務所のDXにまつわる課題と対策について、活発に意見交換を行いました。


2024 年11 月 29 日 (金) 16:30 ~ 17:30 開催
テーマ:デジタルトランスフォーメーション (DX) ってなんだっけ?


今、「DXってなんだっけ?」をテーマにした理由

今回のテーマは「DXってなんだっけ?」。

DXは単なるデジタル化やIT活用ではなく、デジタル技術を用いてビジネスモデルや社会を根本から変革することを指します。しかし、近年では「デジタル化」や「業務効率化」という部分的な取り組みもDXと呼ばれることが増え、DXの持つ「トランスフォーメーション」の要素が軽視されがちです。

今回のイベントでは、DXの本質を見失わないためには、まず徹底したデジタル化を行い、その基盤の上で変革を実現する必要があると確認した上で、事前に用意したDXにまつわる質問をもとに、各事務所が抱える課題を共有し、その対策に関してディスカッションする時間となりました。

Q1.職員全体で「DX」を理解・浸透できていると感じますか?

まずはじめに、「職員全体で『DX』を理解し浸透できているか?」という質問に関する議論が展開されました。
アンケート結果によると、約90%の事務所が「職員間でDXへの理解や認識に差がある」と回答。
この結果からも、DXの概念が広く浸透するには課題が多いことが明らかになりました。

Q2.DXに関する「職員の教育」、「レベルアップ」はどうすればいい?

Q1のとおり、約90%の事務所が「職員間でDXへの理解や認識に差がある」状況で、職人に対するどのような教育が必要か議論されました。

このようなディスカッションがされました📝

参加者A

会議でDXの必要性を繰り返し伝えていますが、響く人とそうでない人の差は依然として大きい状況のため、少数の職員に正しい知識を徹底的に習得させ、そこから他の職員に広める<核となる人材>の育成を進めています!

参加者B

新しいツールを導入した際、まず少数のメンバーが学習し、その知識を定期的な会議で他の職員に広める方法を取っています。しかし、現時点では「DX」という全体的な視点ではなく、各ツールの導入・運用レベルでの取り組みに留まっているため、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等を用いて業務効率化を進めながら、チームメンバーを定期的に変更して、まずは職員全員が少しずつデジタル化に触れられるよう工夫しています!

ディスカッションを踏まえ、研究会会長の山口は「DXを浸透させるには、業務フローそのものを『ツールを使わなければ進まない仕組み』に変えることが重要」と強調しました。具体的には、ペーパーレス化やクラウド化を徹底し、ツールを業務プロセスに強制的に組み込むことで、自然とDXが職員の間に根付くよう取り組んでいると述べました。

これらの事例から明らかになったのは、DXの理解と浸透には、教育や意識改革だけでなく、業務の仕組みそのものを変えることが求められるという点です。ツールの導入だけではなく、それを活用するための「文化作り」が鍵となっているということです。

Q3.所内で行ったDXの取り組みが「ビジネスモデルを変革する」といったレベルに到達したことがあるか?

経済産業省が策定した「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」では、
DXの定義は次のとおりとする。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
…とありますが、実際に所内の取り組みが「ビジネスモデルを変革する」ことはあるのか議論がされました。

このようなディスカッションがされました📝

参加者A

まだデジタル化や業務効率化の段階であり、ビジネスモデル全体を変革するには至っていないですね…。

参加者B

現在の取り組みは所内の業務効率化やITツールの活用が中心ですので、ビジネスモデル全体を変革する段階には至っていないです。

ディスカッションを踏まえ、研究会会長の山口は自社の事例として、ペーパーレス化やクラウドツールの導入が結果的に大きな変革をもたらしたことを紹介しました。たとえば、税務申告業務だけでなく、経営コンサルティング業務へのシフトを実現。また、地元での顧客対応に限らず、全国規模でのサービス展開が可能となったと述べました。さらに、自社開発のツールを同業他社に提供する新しい収益モデルの構築にも成功したと語りました。

議論を通じて、多くの参加者がビジネスモデルの変革にはデジタル化の基盤が不可欠であると再認識し、長期的な視点で取り組む重要性を共有しました。

Q4.顧問先のDXをどのように進めているか?

会計事務所にとって顧問先のDX化は、資料回収の効率化やコンサルティングサービスの拡張の側面で非常に重要な意味を持っています。しかし、業種業態が異なる顧問先のDX化は一筋縄ではいきません。そこで、どのようなアプローチで顧問先のDX化を行っているか議論を行いました。

このようなディスカッションがされました📝

参加者A

顧問先の取引形態や業務プロセスを理解することを重要視しています。具体的には、顧問先が作成している帳票類や現状の業務フローを把握した上で、効率化に向けた具体的な提案を行っています。
また、顧問先の抵抗感を和らげるために、現状の帳票やシステムを大きく変更せずに運用できる方法を提案することが多いです。例えば、現在使用しているエクセルシートを整理し、新しいデジタルツールに対応しやすい形へと調整することで、顧問先がスムーズに移行できる環境を作っています。

参加者B

顧問先の課題をヒアリングし、それに応じたツールや手法を提案しています。パッケージソフトでは補えない部分をエクセルで組んでご提供することも多いです。

ディスカッションを踏まえ、研究会会長の山口は、参加者の皆さんと同じく顧問先の現場でのヒアリングが重要であることを強調しました。

これらの議論から、顧問先のDX推進には単なるツール導入ではなく、顧問先がそのツールを日常業務に活用し、業務改善につなげられるようなプロセス支援が必要不可欠であるとの共通認識が得られました。

まとめ

今回のトークセッションを通じて、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の現状や課題が浮き彫りになりました。各事務所が自らの業務効率化を進めるだけでなく、顧問先とともにDXを推進していく重要性が改めて認識されました。DXは単なる技術導入ではなく、業務フローや組織文化の変革を伴う取り組みです。そのためには、各現場に適したアプローチや柔軟な工夫が求められます。

今後も、中小企業DX推進研究会では、会員間での知識共有や実践事例の紹介を通じて、DX推進の道筋を明確にし、さらなる発展を目指していきます。