DXレポート2を読み解く 第5回(最終回)

 

DXレポート2を読み解く

DXレポート2」は、2018年に経産省が発表した「DXレポート」に対し、その後の企業の動向及びコロナ禍の影響等をふまえて、2020年12月にあらためて報告された最新のレポート(中間報告)となっています。
本コラムでは、この「DXレポート2」の内容をパートに分けて解説していきます。
第5回は第4回に続き、5章「政府の施策の方向性」の内容を見ていきます。

デジタル社会基盤の形成

企業が経営資源を競争領域に集中するために、協調領域では共通プラットフォームを構築し、この部分のリソース投入を最小限にすべきとしています。この実現には、「業界大手の先導」「業界団体等の旗振り」等の進め方が考えられますが、中立性の担保のためには公的機関の役割も重要となります。政府としては、協調領域での合意形成をする議論の場の提供、基盤構築の開発支援、サービス運用、セキュリティやデータ利活用等の運用指針策定を検討するとあります。

デジタルプラットフォーム形成のため、事業者間や社会全体のデータ・ITシステム連携について、産学官連携で全体の見取り図となる「アーキテクチャ」を設計するとあります。IPA(情報処理推進機構)にデジタルアーキテクチャ・デザインセンターが設立され、この設計を主導出来る専門家の育成を進めています。

産業変革の制度的支援

①製品・サービス活用による事業継続・DXのファーストステップ

中小企業の多くは、デジタイゼーションの段階にさえも進んでいない状況ですが、経営者の方針によって一気にDXを推進出来る可能性も秘めています。既存施策である、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「中小企業デジタル化応援隊」「地方版IoT推進ラボ」「ITコーディネータの普及」等ををすすめ、DXの事例集を情報を必要としている企業が必要な情報を手に入れられるよう展開するとあります。

②産業変革のさらなる加速

「ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進」では、究極的にはベンダー企業とユーザー企業の垣根がなくなり、これまでのような受託開発ビジネスではなく、DXの伴走支援パートナーに転換していく事になるとあります。このような事業変革を後押し、優れたベンダー企業である事を明確にするための指標を策定するとあります。

また、「デジタル技術を活用するビジネスモデル変革の支援」として、「DX投資促進税制」「中小企業向けDX推進指標の策定」「DX認定企業向けの金融支援」おこなうとあります。「中小企業向けDX推進指標の策定」では、DXの推進状況を自己診断により把握する事を各種補助金の要件として位置づけるとあります。

人材変革

IT企業以外での、IT人材の不足、また、ITからビジネスまで幅広いスキルを持ち、社内でDXを牽引することができる「DX人材」の不足について触れたうえで、社会全体でのリカレント教育を行う事の重要性を説明しています。また、「ITスキルのアップデート」、「業務の再設計や新しいビジネスモデル提案」、「デジタル技術を前提とした経営」のためにはITのみではない様々なスキルを継続的に身につけていく必要があります。このリスキリングの場の提供と、デジタル人材市場における人材スキルの見える化とマッチングの仕組みを検討するとあります。