会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~業務管理ツール編~(kintone管理者インタビュー後編)

セブンセンスグループがこれまで導入・活用してきたシステムの変遷を振り返る連載シリーズ『会計事務所の導入システムの変遷を振り返る』。
前回は、セブンセンスグループの業務設計の一端を担ってきた、島口さんへのインタビューを通じて、2010年の入社から、仕訳入力や会計ソフトのコンバート対応、デヂエによる管理表設計まで、業務プロセスと現場を支える仕組みづくりの歩みをご紹介しました。
そして今回お届けする後編では、その続きとして「仕組みを支える人」から「仕組みを伝える人」へと島口さんが役割を広げていったプロセスに迫ります。
属人化を防ぎながら、現場が自ら改善を続けていける環境をどう整えていくのか──。
ペーパーストックレス支援やkintone管理者育成など、社内外での支援活動にも広がっていったその取り組みを、お届けします。
島口さん 変遷


今回の書記
2020年2月セブンセンスグループ入社
中小企業DX推進研究会 事務局員 Tさん
『今回もグループの知られざる歴史が垣間見られそうです!』
Contents
仕組みで支え、仕組みを伝える ―― 島口さんの新たな役割
2017年 システム部署の体制強化。脱属人化を目指した仕組みづくり。
2017年、以前のインタビューコラムでご紹介した増田さんをはじめとした新たなメンバーが加わり、システム部署としての体制が強化されました。このタイミングで、島口さんの役割にも変化が訪れます。それまでは実務寄りの業務が中心でしたが、ここからは 「仕組みづくり」 へとシフトしていくことになります。
その際に、特に力を入れたのは “属人化の解消” と “情報共有の仕組みづくり” です。これまでは 「この業務は〇〇さんしか分からない」 といった状態が当たり前のように存在していましたが、業務の背景を口頭で伝え、それを他のメンバーが文書化するという流れで業務分担を進めることで、「知識の見える化」 を進めていきました。
この仕組みにより、島口さんが担っていたさまざまなシステム業務が分散され、サポート体制の強化に繋がりました。さらに、拠点を超えたシステムサポートを担うメンバー同士でも業務を共有し、特定の人しかできない業務をなくす方向へと進んでいきます。知識を自分の中にとどめるのではなく、周囲に伝え、共有しやすい形に整えていく。この考え方が、島口さんの次なる役割と支援スタイルにつながっていきます。
2017年 「ノウハウを伝える役割」 へとシフト
属人化を防ぐ体制づくりが進み、各拠点でもシステムに対応できる人材が育ち始めたことで、島口さんの役割の変化が加速していきます。現場で手を動かす立場から、仕組みやノウハウを社内外へ伝える立場へ ―― そのような転換期が訪れたのです。
島口さんの入社当時から、グループ内ではDocuWorksやペーパーストックレス環境の整備状況を紹介する事務所見学会を継続的に実施しており、島口さんもその案内役として参加していました。中心を担っていたのは、現・中小企業DX推進研究会会長の山口さんでしたが、この頃には、島口さんもこれまでのシステム担当者としての経験を活かして、現場での工夫や改善の取り組みをアウトプットしていったそうです。
こうした活動を通じて、他の会計事務所や企業からも 「自社でも同じ仕組みを取り入れたい」 という声が寄せられるようになり、セブンセンスグループではペーパーストックレスに関するコンサルティング支援を本格的に提供するようになります。島口さんもその一員として、業務フロー全体の設計やツールの導入支援を担うようになっていきました。
コンサル業務においては、これまでに培ってきた自社業務への深い理解が大きな武器になりました。入社直後からの業務経験に加え、見学会での発信を通じて、「どこのポイントをどのように伝えると現場へ届くのか」 ―― それを自然と学ぶ機会が多かったからです。
「仕組みは導入して終わりではなく、どう現場に浸透させるかが大事ですね」 と語る島口さん。まさにこの時期、「構築する人」 から 「伝える人」 へと変化することになります。
現場に根づいた仕組みを ―― 次の時代へ
現在、島口さんは、DocuWorksの活用をベースとした 「ペーパーストックレス支援」 や顧客企業内で自走できるkintoneの管理者を育てる 「kintone管理者育成サポート」 のフロントを担っています。
これらのサービスでは、環境構築や業務管理ツールの設計を代行するのではなく、現場担当者が自ら改善を推進していけるようになることを重視しています。単体の業務にとどまらず、関連する工程や他部署とのつながりを踏まえた設計を行い、運用を継続しやすい仕組みづくりを支えています。
こうした取り組みにおいて、共通する大きなテーマは 「属人化をいかに抑えるか」 です。たとえば、プログラミングに依存せずkintoneで柔軟なカスタマイズができるノーコードツール 「gusuku Customine(グスク カスタマイン) 」 などもグループ内では取り入れて、誰でも扱える仕組みづくりを実現しています。使いやすさと安定性の両立を図ることで、現場のスピード感を損なうことなく改善が継続できるようになりました。
そして、島口さんが大切にしているのは、顧客向けのサポートにおいてもグループ内の整備においても共通して、「現場の声に耳を傾け、それをすぐ形にできる環境を整えること」 です。その仕組みはそれぞれの現場の手によって維持・更新されていくことが、持続的な改善には欠かせないと語ります。
これからも、システムサポート部門だけに頼るのではなく、現場が主体となり改善を持続していける仕組みづくりが業界全体で求められるでしょう。
島口さんの取り組みは、その未来に向けた着実な実践の一つとして、今もなお進化を続けています。
今回のまとめ
島口さんのキャリアは、決して華やかな開発や派手なシステム導入から始まったわけではありません。
小さなExcelの改良から始まり、会計ソフトのコンバートやデヂエの管理表設計、見学会での実務紹介、社内外での業務設計支援 ―― 一つひとつの積み重ねが、今の 「仕組みを支える人」 としての礎を築いてきました。
システムの導入や設計において大切なのは、機能の充実だけではなく、それが 「しっかりと現場に根づくかどうか」 。
島口さんが一貫して大切にしてきたのは、「現場の声に応える柔軟さ」 そして 「伝わる仕組みをつくる」 こと。
その姿勢は、今も変わらず、kintone管理者の育成支援にも活かされているのです。