会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~チェックリストシステム編~ (自社開発者インタビュー)

セブンセンスグループがこれまで導入・活用してきたシステムの変遷を振り返る連載シリーズ『会計事務所の導入システムの変遷を振り返る』。
これまでのコラムでは、現場での工夫や業務設計の取り組みを、実際に運用に携わった職員の声を通じてご紹介してきました。
今回のテーマも、引き続き 「チェックリスト」 です。
前回までは、クラウド型チェックリストシステム 「アニー」 の導入から運用定着までを、現場で立ち上げから携わってきた森さんのインタビューをもとにご紹介しました。
今回はその続編として、現在社内で運用されている自社開発版チェックリストツールの誕生と進化について、開発を担った土井さんの視点からお届けします。

今回の書記
2020年2月セブンセンスグループ入社
中小企業DX推進研究会 事務局員 Tさん
『今回もグループの知られざる歴史が垣間見られそうです!』
Contents
会計知識ゼロから、業務ツールの担い手へ
今回のインタビューに登場いただくのは、2016年入社の土井さん。
前職ではシステム開発会社にお勤めで、管理システムの開発や研究用のソフト開発など多岐にわたりお仕事されていらっしゃいました。時を経て地元である静岡へと転職を考えていた際に、ITにとても力を入れている会計事務所としてセブンセンスの存在を知り、「面白そうな会社だな」 と興味を持ったことがきっかけでの入社だったようです。
入社当初は、会計知識はほとんどゼロ。しかし、当時のシステム責任者・山口 (現・中小企業DX推進研究会 会長) からの依頼を受け、『資料振分ツール』 や会計データのコンバーター作成といった、社内向けのツール開発を次々と手がけていきました。
「ソフト自体の動き方はこれまでの経験から、データ構成やコードから仕組みを読み解くことができました。そこから業務全体の流れを徐々に理解を深めていった感じですね。実際に会計ソフトのデータコンバートなどに関わったことで、自然と “この項目はここにつながる” という感覚が身についてきました」
開発対象は、おもに社内の実務に根ざしたツールが中心の土井さん。
現場の使い勝手を考え、細かい仕様にも配慮するスタイルで、日々の要望に応える開発を積み重ねてきました。
「いつも通り」 の開発姿勢が生んだスピード対応
「私自身は『アニー』を直接業務で使ったことはなかったんですが、皆さんがどう使っているかはある程度知っていました」
そう語る土井さんが口にした 「アニー」 とは、チェックリスト機能とマニュアル機能を兼ね備えたクラウド型の業務支援ツールで、株式会社 関通が提供するサービスです ( 公式サイトはこちら ) 。
セブンセンスグループでも2017年ごろから導入され、業務ごとの手順を可視化し、属人化や品質のばらつきを防ぐための基盤として、業務に欠かせないものとなっていました。前回の森さんのインタビューでは、こうしたチェックリスト運用の立ち上げや、現場での活用の様子をご紹介しています。
➡ 【管理者インタビュー前編】
➡ 【管理者インタビュー後編】
その 「アニー」 に、あるときシステム障害が発生します。
使用不可の状況が続き、現場での混乱を避けるため、急遽、代替となるチェックリストツールを社内で開発する必要が生じました。
その開発を託されたのが、これまでもさまざまな社内ツールを形にしてきた土井さんでした。
「 “チェックできる” “更新できる” “履歴が残る” という最低限の機能に絞って、まずは現場で使える状態にすることを優先しました。こういう緊急対応も、これまで携わってきた開発と同じ感覚で、落ち着いて始められましたね」
そう話す土井さんですが、このときの開発期間は、なんと一週間にも満たない短期間。
「山口さんからのフィードバックが本当に素早く明瞭で、『この機能は今いらない』 『これだけは絶対に必要』 と、利便性を突き詰めて要不要の判断が的確だったんです。それがあったからこそ、スピード感を持って進められたんだと感じています」
急ぎの依頼ではあったものの、いつもの姿勢で、いつものように応える。
その積み重ねが、結果として “現場の業務を止めないための仕組み” を、ごく自然なかたちで生み出していました。
現場の声を聞き、機能を育てる
こうして誕生したチェックリストツールは、リリース後も現場の声を活かしながら細かな改良が加えられていきました。
現在では、DocuWorksと連携した社内専用ツールとして、グループ全体にすっかり定着しています。
例えば、各チェック項目には、関連するフォルダや資料を添付することが可能になりました。
「 “○○フォルダのファイル名△△という資料を見ながら作業してください” と書くだけでなく、その場で直接アクセスできるようにしておけば、作業者がフォルダを開きに行くことも、いちいち探す手間もなくて済みます」 と土井さんは話します。
また、チェックリストの文言そのものも柔軟にカスタマイズできるようにしており、文字色も複数変えられるようになり重要なポイント目立たせることも可能に。
「 “これは特に気をつけてほしい” という部分は、自然と目に留まるように。ちょっとした工夫ですが、現場ではこういう違いが大きいんですよね」
中でも特に管理者から評価が高いのが、進捗や履歴の管理機能です。
どの作業者が、いつ、どの項目をチェックしたか、はもちろん、チェックリストの印刷ログまで可視化できる仕様になったため、「誰が、どの資料を使い、いつ、何をしたのか」 までもが、あとから確認できるようになっています。
「現場から “こういう項目を見られるようにしたいです” っていう声が届いたときに、すぐ実装できるのが自社開発の良さですね。なるべく以前のシステムで “便利だったこと” は取りこぼさずに、そこにプラスアルファできるよう心がけています」
現場と密につながりながら、”使われながら育っていくシステム” として着実に進化を続けています。
“無理を通す” のではなく、”皆が同じだけ効率が良くなる” 選択を
「やろうと思えばなんでも盛り込んで作れるのですが、現場全体が無理なく使える形じゃないと意味がないんですよね」
そう語る土井さんは、単に開発の可否を判断するだけでなく、”実際に使われ続けるかどうか” を最も重視しているといいます。
「例えば、ひとりだけが便利になる機能ではなく、関わる全員が “少しずつ楽に、効果を感じられる” ようなものを選んでいます」
そうした視点で取捨選択された機能の数々は、決して派手ではないかもしれません。
けれども、だからこそ実務の中に自然と馴染み、業務そのものを支える “仕組み” として息づいていくのです。
この姿勢は、単なるプログラミングではなく、”業務そのものをどう整えるか” という視点に根ざした、設計者としての開発と言えるのかもしれません。
今回のまとめ
今回ご紹介した自社開発のチェックリストツールは、突発的な事情をきっかけに開発されたものでした。
しかしその背景には、長年にわたって社内の業務と向き合い、日々改善と対応を重ねてきた “いつもどおり” の土井さんの姿勢がしっかりと存在していました。
「現場が混乱しないように」 「すぐに動かせるように」 「確実に役立つように」 「ヘルプページに頼らないでも使いやすいように」 。
そうした目線でつくられたこの仕組みは、今も現場の中で少しずつ進化を続けています。
属人化の防止、業務の見える化、そして管理者と実務担当者双方にとっての使いやすさ。
そのすべてを支えているのは、”現場の声をきちんと拾い、それを設計に反映する” という地道な姿勢です。
こうして蓄積された社内システムの知見は、外部提供も視野に、機能の整理や改良がさらに進められています。
現場から生まれ、実務に根ざして育てられてきた仕組みには、業種や立場を超えて活かせるヒントが詰まっているのかもしれません。
なお、今回のコラムでご紹介の 「自社開発のチェックリストツール」 は、販売を開始しております。
本ツールについてさらに詳しくお知りになりたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。