会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~チェックリストシステム編~ (管理者インタビュー前編)

セブンセンスグループがこれまで導入・活用してきたシステムの変遷を振り返る連載シリーズ『会計事務所の導入システムの変遷を振り返る』。これまでのコラムでは、グループ内で利用してきた業務管理ツールや業務設計の工夫を、現場担当者の声とともにお届けしてきました。
今回のテーマは、チェックリストシステム。
2025年現在、セブンセンスでは多くの業務にチェックリストが活用されています。チェックリストシステム導入の背景には、拠点ごとに異なる作業手順や品質のばらつき、特定の担当者に業務が集中し依存してしまう “属人化” の課題があったといいます。
本コラムでは、チェックリストシステム運用の立ち上げに携わってきた職員・森さんへのインタビューをもとに、クラウド型ツール 「アニー」 導入時の工夫や、現場での反応、実際の運用を通じて見えてきた効果や課題を振り返ります。
まず前編では、チェックリストシステムを導入するまでの経緯と、現場で実際に使い始めた当時の取り組みについてをご紹介します。

今回の書記
2020年2月セブンセンスグループ入社
中小企業DX推進研究会 事務局員 Tさん
『今回もグループの知られざる歴史が垣間見られそうです!』
「アニー」 の導入は、品質と再現性のために
セブンセンスグループがチェックリストシステムの運用に本格的に取り組み始めたのは、2017年頃のこと。
当時の背景には、拠点間での作業手順や品質のばらつき、業務の属人化といった課題がありました。
その時期は拠点数も増えたことで、どの拠点でも本社と同等の品質で業務を行える体制づくりが求められていました。同じ業務であっても担当者によって手順が異なる場面も多く、「どのようにすれば誰がやっても同じ成果が出せるのか」 という課題も浮き彫りとなっていました。
以前から顧客ごとに担当者が独自の手順書を作成しているケースはありましたが、項目の加除・訂正が簡単にはしづらい環境にあったことで、作成以降更新されないままメンテナンスがなされていない状態も散見されていました。ほかにも保管場所やフォーマットが一元化されていないことで最新版がどれなのか不明瞭であり、そもそも全顧客分の手順書が整備されていなかったりと、全体での運用には限界があったようです。

こうした課題を受けて、「業務工程の見える化」 と 「誰でも同じように認識し進められる仕組み」 へのニーズが一気に高まり、チェックリストシステム導入の必要性が現実味を帯びてきました。そこで当時グループの業務改善を牽引していた山口 (現・中小企業DX推進研究会 会長) が導入提案したのが、株式会社 関通の提供しているクラウド型チェックリストシステム 「アニー」 でした。士業向けに特化したツールというわけではなかったものの、業務を進めながらチェックができるうえ、マニュアルとしても機能するインターフェースへ可能性を感じ、導入が決定されました。
ゼロから始まったチェックリストの構築
最初に手をつけたのは、月次の会計入力業務に使うチェックリストでした。リストの作成を担当したのは、実務経験が豊富であった森さんのほか、会計部門の職員との2名体制でした。業務の流れを熟知していたことから、自然な流れでこの役割を引き受けることになったといいます。作業は通常業務と並行しながら進められ、およそ500件のチェックリストを1〜2か月ほどかけて形にしていったそうです。
つくり方も特徴的でした。ゼロベースでフローを書き出していくのではなく、これまでの資料や入力済みの会計データを見ながら、「実際にどういう順番で作業していたか」 を逆算するように洗い出していったといいます。「過去の資料を見れば、おおよその流れは見えてきましたし、それを順番に整理していくイメージでした」 と話す森さん。
また、作成のポイントとしてどの顧問先にも当てはまるような汎用的な手順を掲載したのでは、チェックリストの使用において形骸化を引き起こす要因となりかねないため、特有の個別事情にフォーカスした内容を主に書き出していったそうです。
完成したチェックリストは、すぐさま現場へ持ち込まれ、実際の業務で試されていきました。「とりあえず一度使ってもらって、”あれ?” と思うところがあればどんどん直す。最初から完璧なものを目指すというより、”現場で使いながら育てていく” という感じでしたね」 と森さんは振り返ります。非担当制の業務フローにおいて、現場作業者それぞれが 「1行でも1項目でも加筆、修正」 を毎回作業するごとに繰り返していくことで、チェックリストは少しずつ磨かれ、実務の中に馴染んでいきました。
現場が動いた、初期運用のリアル
最初にチェックリストシステムが本格的に運用されたのは、石垣島の支店でした。
導入にあたって森さんは、「新しいツールに抵抗を感じる人もいるかも」 という不安もあったそうです。実際にはその逆で、むしろ 「 “これがあってよかったです!” という声のほうが多くほっとしました」 とも。運用としては使い方を説明するようなレクチャーの機会も用意はされていたものの、細部まで解説した記憶まではないともお話しくださいました。操作方法やできることはとてもシンプルであったこともあり、現場では自然に使いこなされていきました。
「みんなが一律に使ってくれているのかどうか、管理画面上で確認ができているので、ほぼ全員がきちんとチェックを入れてくれていたのを把握できて、安心しました」 と森さんは話します。無理に定着を呼びかけなくても、現場での受け入れは事前に考えられていた以上にスムーズだったようです。
その後、チェックリストシステムは入力業務での運用だけに留まらず、監査業務へも展開されていきました。ベースとなる入力用チェックリストを複製し、そこから監査に必要な項目を追加していくという方法で整備が進められました。一つの仕組みを応用していくことで、他の業務への展開もスムーズに行われていきました。
今回のまとめ
クラウド型チェックリストシステム 「アニー」 の導入をきっかけに、セブンセンスグループでは業務の見える化が進み、属人化や拠点間のばらつきといった課題に向き合う基盤が整っていきました。森さんら現場の職員が主導して作り上げたチェックリストは、現場で実際に使いながら改善を重ねることで、無理なく定着していったのです。
前編では、導入の背景から初期構築、現場での運用開始までを振り返りました。後編では、チェックリストの活用がもたらした副次的な効果や、現場で起きた変化、そして現在進められている自社開発ツールへの移行についてご紹介します。