株式会社 ファーストアソシエイツ 竹田先生に聞く! 『経理代行サービスの立ち上げから運用までの秘訣』

経理代行業務は多くの企業で必要とされており、実際に業務を請けていらっしゃる事務所さまも多くなっているのではないでしょうか。ツールなども昨今多岐にわたり、対応される職員の知識や考え方による部分など、その運営には多くの工夫が必要です。特に、クライアントごとに異なる要望やルールにも対応しつつ、効率的かつ効果的に経理代行を運営することは、利益に直結する重要なポイントです。

2024年8月30日実施の中小企業DX推進研究会スペシャリストセミナーでは、経理代行業務の立ち上げと運営基盤を構築された株式会社 ファーストアソシエイツの代表で税理士の竹田 清香氏に、具体的な手法や秘訣をトークセッション形式で伺いました。

パネリスト

株式会社 ファーストアソシエイツ 代表取締役社長
ファーストパートナーズ会計事務所 代表税理士
竹田 清香氏

中小企業DX推進研究会 会長
山口 高志氏

トークセッション

定型化された立ち上げ手順について・・・

司会

たとえばヒアリングを行う際 「これさえ確認できればクライアントの状況把握ができる」 とか 「この手順でヒアリングを進める」 といった “決められた手順” はあるのでしょうか?

竹田

チェックリストを用いて仕訳の件数や振込の件数などを伺う定型的なヒアリングの形式はありますが、バックオフィスといっても状況はさまざまです。
会社さまの状況によってお悩みも異なり、どこまでアウトソーシングができるのか業務の整理を中心に、極めて属人的にしっかり私自身が入って対応をしています。業務設計や業務改善のコンサルティングからサポートさせていただく場合もありますので、固定の手順というよりも、クライアントに寄り添った対応をしていますね。

山口

経理代行業務においては、一番最初のヒアリングや立ち上げが結構、要になるのかなと思っているのですが、クライアント側のどのような方に参加していただくかについて、たとえば、現場の担当者さんだけではなく必ず代表に参加いただくとか.. どのように考えられていますか?

竹田

クライアントの規模にも寄りますが、私が必ず申し上げるのは、最終決定権のある方には必ず同席していただきたいということですね。最終決定権を持つ方が同席しないと、のちにプロジェクトが上手く進まないことがあるためです。過去に、現場の担当者だけで話を進めた結果、代表者の意向と合わずにプロジェクトが失敗したことがありました。逆に、トップダウンでしっかりと話を聞き取ったうえで進められたケースでは、非常に上手くいったことがあります。

使用するツールについて・・・

山口

経理代行業務を行う上で、マネーフォワードやfreeeなど.. 基盤となるツールは何をお使いですか?

竹田

クラウド会計ソフトは基本的には3つありまして、freee・マネーフォワード・勘定奉行クラウドを使用しています。クライアントの規模によって比較してご提案している形ですね。

山口

では最初から「これを使ってやります」というよりかは、クライアントの規模で使用するツールも使い方も分けてご提案している感じでしょうか?

竹田

そうですね。なるべくツールは沢山にならないような工夫はしていますね。何もないまっさらな状態からやってほしいというお話であれば、要件を聞きながら、一緒に組み立ててシステムをご案内するというようにしてます。

山口

なるほど。そうするとヒアリングをされる方は「このお客さまならこのツールかな?」とか「現状これを使われているならそのまま使おう」と、ひと通りのツールを、ある程度触ったことがある方が判断されながらお話しされるのですか?

竹田

そうですね。たとえば部門分けをどこまでするかとか、freeeであれば品目やメモタグを活用して.. など、最終的にそれらの情報を、どこに落とし込みたいかだと思うんですよね。

 経営者の方が営業交通費を分析したいというお話であれば、「経費精算のここで、従業員さんにはこういうふうに入れてもらったら、うまく跳ね返って見えますよ」というような目線でご提案すると、結構、納得感も得やすいですし実際に導入効果もあります。なので経費精算システム一つにしても、「何をゴールにしていますか」 という点は意識して、ご提案するようにしていますね。

山口

やはり先にゴールがあるんですよね。

竹田

もちろん、電帳法やインボイスもあるので「経費精算システム入れましょう」というような話は当然あると思いますが、そこにプラスαで「弊社が求められていることは何かな」という点を意識してご提案するようにしてます。

山口

結構、会計事務所では「記帳が楽になる」とか「早く試算表を作れるから」という理由で「ERPを導入しよう」というような結論になりがちですよね。仮にお客さまが導入したツールを使えないなら自分たちがやれば早いんじゃないか、などといった流れから経理代行を立ち上げる、というところも多いと思います。

 ですが、竹田先生の会社では、どちらかというと経営者が「売り上げをもっと素早く把握したい」ということであれば、それを解決するためのDXツールとして使おうと。そして、そのための経理代行をやろうという流れに感じます。経営者が求めているゴールに合わせるためのDX化として、アウトソーシングを受けるみたいなイメージですね。

竹田

そうですね。そのイメージが強いですね。 アウトソーシングって考え方によっては「一旦、ひとの手に渡るから、内製化した方がやっぱり早くなるよね」というふうに考える方も多いですよね。

 ですが、今の世の中、クラウドになってきているからそんなことなくて、資料さえ現場の方があげてくれれば、そこで数字は固まると思うんです。なので、あとは会計事務所が楽になるからじゃなくて、やはり「その数字、なぜ必要なんですか。申告のための数字じゃないですよね、会社を生かすためにやりますよね。」というところは、説得をしてやっていくべきだと思います。

立ち上げと運用について・・・

山口

お話を伺っていくと、クライアントとのコミュニケーションをかなり頻繁にされている印象を受けました。実際のところ、一度訪問すればある程度まとまるのか、週一でミーティングやりますとか.. 立ち上げ時にはどれくらいの頻度で、コミュニケーションの機会を設けていらっしゃいますか?

竹田

それこそ、スムーズに一週間ほどで立ち上がったケースもあれば、半年から一年ぐらいかけて、じわじわと立ち上げていったケースもあります。 

 その点においても、クライアントのIT対応力の違いや、どの程度、時間が確保できるとか、こちらがお願いしたものを迅速に提供してくださるなど、クライアントの状況次第にもよるんですよね。 

 早いところというのは「いきなり経理の方が辞めてしまって、もうどうしようもないから、助けて!」という案件でした。ひとまず、支払いと記帳のところから始めて、じわじわ経費精算にも取り掛かり、段階的に着手して最短で2か月ぐらいで全てが終わりました。

 クライアントによっては、パソコンの操作自体がむつかしい方もいらっしゃいます。そこで、初回の訪問時に、経理担当の方の就業環境を確認させてもらいます。小さなパソコンで不自由に作業されている様子であれば、まず経理がしやすい環境をつくっていくことをお勧めしますね。それからZoomの使い方をお伝えしたり、チャットワークでコミュニケーションラインをつくるなどの下ごしらえを行います。 

 その後は、ガントチャートを使い、「タスクダッシュをこうして」「今ボールがどっちにあって、どこまでが終わってる・終わってない」といった状況が分かるものを、予め作って立ち上げていくことがポイントかなと思います。

山口

パソコンサポートというと語弊があるかもしれませんが、結構広く立ち上げ時のサポートをされてる感じですよね。

竹田

でも、パソコンサポートにならないようには、十分気を付けています。そのクライアントのパソコンのサポートをされている出入りの業者さんとも連絡先を交換するなどして、お困りごとはそちらに、といった連携をとるようにしているんです。もちろんなかには担当する職員が献身的に対応される場合もありますが、工数や日報から状況を把握してクライアントへ連絡を入れさせていただくこともありますね。

以降のトークセッションの様子は、研究会会員専用サイトのアーカイブ動画(体験会員は視聴不可)にて近日配信予定です。