会計事務所博覧会2025 参加レポート 「明日から試せる!AIで変わる税理士業務」
2025年9月11日・12日、東京都立産業貿易センターにて開催された 『会計事務所博覧会2025』 にて、弊研究会の会長である山口 高志がセミナー講師として登壇いたしました。当日は、会計業界における生成AI活用による業務改善や最新のツール事情など、”明日から試したくなる等身大の使い方” をお話しいたしました。

2025 年9 月 12 日 (金) 13:45 ~ 14:30 開催
<テーマ>
明日から試せる!AIで変わる税理士業務
~ 入力・整理・検索・報告、すぐに使える機能・使えない領域と課題 ~
<講師>
セブンセンスR&D ㈱ 代表取締役 (セブンセンスグループCTO) : 山口 高志氏
アップパートナーズグループ / ㈱ SOTコンサルティング (IT事業部 マネージャー) : 山下 正晃氏
sankyodo税理士法人 (パートナーCTO・税理士) : 宮川 大介氏
税理士業務における生成AIツールの選択とその理由
まずは、生成AIの導入状況について議論が行われました。
講師として参加した3社ではいずれも Google Workspace を基盤として Gemini、NotebookLM などを活用しているという話題になりました。
多くの企業でもすでに使われているグループウェアの一つですが、決め手として導入のハードルの低さや情報統制のしやすさという点で選定したというお話も聞けました。
職員に使用してもらう際に、あまり難しいことを話してしまうと、「みんなポカーンとして関心度が下がりがち」 ということも。すでに使用している環境の延長線上でAI機能を試せるという手軽さも、導入するポイントであるとのことでした。
また、つぎつぎと便利なAIツールやサービスが出てくる中で、会社の許可なく、あるいはそのセキュリティリスクが未検証のままに、個々がサービスを使い始めてしまうケースも懸念事項として挙げられました。税理士業務のような機密情報を多く扱う現場では、情報漏洩を防ぐためにも許可するツールを明確に決定し推進していくことが、現実的な第一歩だろうとの意見も出されました。
生成AIが役立つ場面とは
つぎに具体的にどのような業務で生成AIを使うのか、効果的なのか、という点が議題となりました。
会計業務に生かすという点では、生成AIでの “自動仕訳” は真っ先に思い浮かびそうなところですが、登壇者の間では 「会計ソフトベンダーによって高度なAI仕訳機能が組み込まれて提供されるのを、待つ方が合理的だろう」 との認識で一致しました。仕訳生成の精度を高めるためには、質の高い学習データや標準化されたプロセスが不可欠であり、各事務所レベルで追求するのは非効率だという意見です。
一方、議事録など資料作成の場面での生成AI活用は、すでに浸透してきています。ここでは、NotebookLMを使い顧問先の過去数年分の試算表や決算書のデータを読み込ませたうえで、売上の特徴や傾向、異常値の分析をさせるような使い方をされているという事例も伺えました。さらに、その分析結果を基にした経営改善の提案書たたき台を生成するところまで試されている段階のようです。
資料作成の時間を大幅に短縮したり、単なる作業の自動化という観点だけではなく、人間が見落としがちなパターンの発見や、分析から提案までのより高い付加価値の業務を、AIがサポートできる可能性もあるようです。
将来的な活用イメージ
現状の取り組みを踏まえ、 “こんな世界を目指したい” という今後の方向性についても意見が交わされました。
たとえば、巷で公開されている Google Apps Script アプリを活用したスライドの自動生成、プログラミングなしでアプリが作れる AppSheet と Apps Script を組み合わせた汎用的な業務アプリの作成など、日々の業務の中で手間のかかる部分にAIを取り入れて賢く効率化していくのだ、という具体的なアイデアや取り組みも紹介されました。
さらに、AIを使い大きなプロジェクトや業務タスクを自動で小さなステップに分解して、タスク管理ツールと連携する――といった、一歩踏み込んだマネジメントの自動化のような活用構想もありました。
まとめ
今回のセミナーでは、すぐに試せる生成AIの活用方法だけでなく、それぞれの企業においてIT推進の中核を担う立場にある登壇者たちが想う、将来的な活用ビジョンまで幅広い視点で共有されました。
昨今のAI関連の技術進化や動向はとても速く、情報収集への疲弊感といった話題でも盛り上がっていました。この疲弊感は経験豊富なベテラン層に限らず、若いエンジニアでさえ 「この先もずっと続くのかと思うと辛いです.. 」 と漏らすほどだ、ということも語られていました。
AI活用を進めるうえでは、技術的な側面だけでなく組織文化の醸成や人材育成、セキュリティガバナンスの確立など課題は多いものです。しかし、まずは触れてみる、どんなことに活用できるのか想像してみる、といったとてもシンプルなところから始まるのかもしれません。
