イベントレポート 「DXインサイトツアー~ 物流業のデジタル革命を現地で体感 ~」

中小企業DX推進研究会は、2025年8月28日に、実際の企業のコア業務でどのようにデジタル化が進んでいるのかを見学する 「DXインサイトツアー」 を開催いたしました。

今回のDXインサイトツアーでは、株式会社 関通さま全面協力のもと、物流代行サービス事業のDXの最前線を見学してまいりました。
記帳代行や経理代行といった、業務のアウトソーシングサービス (BPO事業) を行われている会計事務所にとっても、ITツールの活用だけでなく、生産性向上の取り組みや、社員の成長を促す教育の仕組みなど見どころ満載のイベントとなりました。
本レポートでは、DX研究会メンバーが実際に現地で感じた気づきや学びを振り返りながら、物流現場の工夫や仕組みづくりのポイントを順にご紹介していきます。


2025年8月28日 (木) 13:00 ~ 17:00 開催
イベント名称:DXインサイトツアー ~ 物流業のデジタル革命を現地で体感 ~


株式会社 関通のご紹介

↑画像クリックでYouTubeの説明動画に飛びます

税理士業界でもクラウド型チェックリスト 「アニー」 を提供する企業として知られている、株式会社 関通様ですが、物流業界ではロボティクスAIなど、最新の技術を積極的に導入し、物流の効率化を図っている企業として多数メディアでも取り上げられています。

自社開催されている倉庫見学会には、これまで累計1,200社以上が参加し、物流業界にとどまらないさまざまな業種の企業が、年間130社以上も訪れています。

今回見学するEC通販物流センターの延床面積は約5,600坪。大人や子供服などのアパレルやアクセサリー、冷凍冷蔵倉庫では、スイーツや食材など、多種多様な商品の庫内作業を行っているセンターとなっております。

広大な倉庫の中で様々なデジタル機器や、ソフトウェアが活用されています。

ITツールだけでなく、年間100以上の現場改善を行うなど生産性を向上するための取り組みや、社員の成長を促す教育の仕組みに日々チャレンジされています。

イベントの振り返り

ホワイトボードのシフト表 (作業の効率化・評価の数値化)

まず私たちが現場で強く印象に残ったのは、作業の進行や人員配置をひと目で把握できる 「ホワイトボードのシフト表」 でした。
倉庫の入口に掲示されていたそのボードには、効率化と一体感を支える仕組みが凝縮されていました。

このようなディスカッションがされました📝

中小企業DX推進研究会会長 山口

当日のシフト表が倉庫入口にあるホワイトボード上に明記されていたのは目を引きましたね。
1時間単位で現場・作業内容が割り当てられていて、作業者それぞれが並行して何の作業をしているのか明確でした。作業が押したり早く終えた場合など、変更を加えるのにおいてもここはホワイトボード (アナログ) で対応するのがスムーズなのだと伺いました。

事務局スタッフ

予定入庫数というのがその日のうちに終える分なのだそうですが、当日勤務しているひとで達成するために割り振られている、という一体感もこのシフト表から感じました。現場では、ひと工程やひと動作、一歩など些細なことでも削減できそうなカイゼン案は常に議論され、試行錯誤されているのだそうです。このカイゼン案は役職とか経験値にかかわらず出されていて、実際に採用される案もその現場メインで勤務されているパートさんの意見も多く取り入れられているようです。

事務局スタッフ

ホワイトボードのシフト表は本当に印象的でしたよね。たしかに作業の流れが一目でわかりますし、”現場全体で達成に向かう一体感” というのも伝わってきました。しかも、その場で誰でもカイゼン案を出し合える雰囲気があって、単なる予定表ではなく “現場を動かす仕組み” として機能しているのだなと強く感じました。

倉庫運営 (倉庫の効率的な利用)

続いて注目したのは 「倉庫の効率的な利用」 についてです。
物流の現場を支える大きな器である倉庫をどのように活用しているのか。
その工夫の数々には、私たちの事業にも応用できるポイントが多くありました。

このようなディスカッションがされました📝

中小企業DX推進研究会会長 山口

20拠点ほど倉庫や社屋があるそうですが、そのどれもが賃貸で運用されているのには驚きました。倉庫内は所狭しと同じ形状の箱におさめられた商品がならんでいて、空きスペースをつくらない工夫の重要性を感じましたね。また、自社の展開に置き換えると、箱さえつくることができれば賃貸契約の倉庫として利用できる可能性も見えた気がします。

事務局スタッフ

倉庫運営に関連して見学した Gate Assort System (ゲートアソートシステム) もとても印象的でした。バーコードを読み取ると、仕分けボックスのゲートが一つだけ開いて投入を促してくれる仕組みになっていて、”一度に一つ” というルールが徹底されていることで誤投入を防げるのは大きな強みだと感じました。投入が完了すると音で知らせてくれるということで、聴覚的な工夫まで備えられているのは、現場で働く方の安心感にもつながると思いました。

事務局スタッフ

中にはロボットがない倉庫もあるともおっしゃっていましたね。株式会社 関通では、ロボットやITに頼る部分より人の活躍を6割として設定しているのだそうです。これはお客さまのニーズへ即座に応えやすくするためもあり、デジタルへの代替を検討する前にいかに仕組化していけるか、日々検討をされているというのは印象的でした。個別の対応を受け入れるということではなく、”仕組化する” というのは、会計事務所にとってもヒントとなるのではないでしょうか。

事務局員のまとめ

中小企業DX推進研究会会長 山口

「業務提携の展開 (物流における課題と協力の可能性) 」
資料回収などが配送業者と連携できればより効率的になりそうです。遠方の事務所を含めた業務アウトソーシングの受け入れも見込めるのではないかな、と考えがひろがりました。

事務局スタッフ

「仕組みと人の力が融合したDXの現場」
今回の見学を通じて強く感じたのは、現場の仕組みがとても洗練されているという点です。ホワイトボードのシフト表は単なる予定表にとどまらず、”現場を動かす仕組み” として機能していましたし、Gate Assort System のような誤投入を防ぐ仕掛けや柔軟に対応できる仕組みも印象的でした。そして何より感動したのは、見学会そのものの運営体制です。社内全体で『何を見せ、どう説明するか』が共有されていて、現場の社員の方々が参加者の関心を理解し、わかりやすい動作や声かけを意識されているのが伝わってきました。仕組みやシステムに加えて、人の力と一体感があってこそDXが根づくのだと、改めて学ぶことができました。

事務局スタッフ

「頭で考えるのではなく身体で動ける仕組み」
見学していて感じたのは、あらゆる箇所に掲示されている内容がいずれもシンプルだったな、という点でした。作業手順を記したチェックリストシステムのアニーの一つひとつの項目の書き方も、一行一項目といった感じで、説明的でなくとても明瞭だなと思いました。倉庫内の商品の陳列や作業で使用される機器の置き場も、色や数字で区分されていたり、物のサイズにシールで印がされていました。見ればわかる!そうするしかない!といった仕組みやルールに感動しましたね。会計事務所の業務においても工程やお客さまのラベリングなど、なにか生かせそうな気がしました。

まとめ

今回のDXインサイトツアーを通じて、私たちは 「現場に根づく仕組みと人の力の融合」 こそがDXを推進する原動力であると強く感じました。
ホワイトボードのシフト表に象徴されるような現場全体の一体感やカイゼン文化、倉庫運営における柔軟な発想、そして 「見ればわかる仕組み」 を徹底した現場づくり。これらはいずれも単なる効率化ではなく、社員一人ひとりが主体的に動き、共に成果を生み出す環境を支えるものでした。

さらに印象的だったのは、見学会の運営体制そのものです。社内全体で 「何を見せ、どう説明するか」 が共有され、現場の社員の方々が参加者の関心に寄り添った説明や動作を実践してくださったことにより、学びが一層深まりました。
まさに一体感ある運営そのものがDXの本質を体現しているように思えます。

ご参加いただいた会員の皆さま、そして全面的にご協力いただきました株式会社 関通の皆さま、本当にありがとうございました。
今回得られた気づきを今後の業務や活動に生かし、さらにDXを推進してまいりたいと思います。