会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~業務管理ツール編~(後編)

セブンセンスグループがこれまでに活用してきた業務管理ツールを振り返りながら、 「ツールの違いが際立つポイント」 や 「どのような運用の工夫がなされてきたのか」 を中心にお伝えします。ただ新しいツールへと置き換えるのではなく、どのようにツールを活用し、最適な業務フローを構築してきたのか。ツール導入や運用方法の見直しを検討されている方にとって、ヒントとなる情報があれば幸いです。

今回の書記
2020年2月セブンセンスグループ入社
中小企業DX推進研究会 事務局員 Tさん
『入社前の歴史を知ることができそう!ワクワク!』
Contents
前回の振り返り
前回のコラムでは、セブンセンスグループが導入してきた業務管理ツールの変遷を振り返りながら、DX推進における 「ツール選定」 と 「運用方法」 の重要性について紹介しました。業務フローの変化に伴い、Excelファイルでの管理から 「デヂエ」 の導入、さらに 「BizBase」 と 「デヂエ」 の併用へと進化し、業務の属人化を防ぎながら、柔軟な運用を実現してきたことをお伝えしました。
今回はその続編として、 「Webブラウザで表示できる管理表」 の自社開発と、 「FileMaker」 の導入、そしてグループ発足に伴う業務管理の最適化について詳しく紹介します。業務の効率化とDX推進がどのように進められてきたのか、その変遷を振り返りながら、ツールの選定と運用が業務改善に与える影響を考えていきます。
セブンセンスグループ 業務管理ツール 変遷

2012年~ ついに自社開発!「Webブラウザで表示できる管理表」運用開始
2008年以降、セブンセンスグループの業務管理は、通常業務を 「BizBase」 、季節業務を 「デジエ」 で管理するという体制に落ち着いていました。しかし、業務フローの変化に伴い、これまでの業務管理ツールでは対応しきれない課題が出てくるようになりました。
特に大きな変化があったのは、季節業務の非担当者制への移行です。それまでの 「顧客ごとに担当者を配置する」 方式 (担当者制) から 「工程ごとに担当者を配置する」 方式 (非担当者制) へと移行し、各工程の担当者が、自分の担当する工程に溜まった案件を順番に処理していく形になりました。この業務フローでは、どの工程に何件の案件が到着しているのかを、リアルタイムで把握できる仕組みが求められるようになりました。
そこで、セブンセンスグループは自社開発による 「Webブラウザで表示できる管理表」 の運用をスタートさせました。「Webブラウザで表示できる管理表」 は 「デヂエ」 から1分ごとにCSVデータを出力させ、そのデータを基に案件の件数を一覧表示する仕組みとなっています (デヂエのサービス終了後はデータベースをkintoneに移行) 。この管理表の導入により、各工程の担当者は、どの作業が滞っているのか、どこに優先的に対応すべき案件があるのかを即座に把握できるようになりました。今も、このような管理表の設計思想は受け継がれており、現在使用している管理表のデザインのベースにもなっています。

📝POINT📝
自社開発による 「Webブラウザで表示できる管理表」 の運用は、システム専門の部署があるからこそ、実現できたことかもしれません。しかしながら、ツールに合わせて業務設計するのではなく、業務に合わせてツールを選定・設計する思想は、それ以前の歴史を踏まえてもセブンセンスグループのシステム設計の礎になっていると感じます。
2017年~ ノーコード設計&カスタマイズ性の高い「FileMaker」導入
2017年、長年業務管理の中核を担ってきた 「BizBase」 のサービス終了が決まったことにより、セブンセンスグループは新たな管理システムへの移行を迫られました。そこで採用したのはノーコードでの開発が可能で、カスタマイズ性の高い 「FileMaker」 でした。
FileMakerの最大の特徴は、ノーコードで開発が可能なことです。これにより、プログラミングの知識がなくても、システムに関する基本的な理解があれば、管理や修正を行うことができる環境が整い、現場の意見を反映したシステムをリアルタイムに構築できるようになりました。特に年度ごとに業務フローの見直される季節業務においては、ツールの制約に縛られることなく継続的な業務改善が可能になったことが、大きなメリットになりました。
また 「FileMaker」 で構築した管理表は、それまで運用していた 「Webブラウザで表示できる管理表」 のデザインを踏襲していて、リアルタイムで工程ごとの案件数を可視化できる仕様もそのまま引き継がれ、従来の運用方法から大きく変更することなくスムーズに新システムへと移行することができました。

📝POINT📝
今やFileMakerやkintoneなどのノーコードツールの活用は一般的となりましたが、当時としては大きなチャレンジだったのではないでしょうか。開発コストを抑えながら、現場からの声をリアルタイムに反映できる環境をいち早く整えたことで、柔軟な業務改善が可能な体制を確立できたのだと感じました。
2019年~ グループ発足に伴う業務管理ツールの最適化
2019年11月、旧アイクスグループと旧東京税経センターグループが統合し、セブンセンスグループは発足しました。 これにより、各法人が独自に業務管理を行う体制を整備し、より現場に則した業務管理ツールの運用へ注力するようになりました。それと同時に、セブンセンス株式会社を中心とするグループでは、会計事務所向けkintone運用支援サービスも本格的に開始しました。kintoneを導入・活用する際のサポートを提供し、業界全体の業務効率化とデジタル化推進に寄与しています。
このように、グループ発足を契機に、各法人が最適な業務管理ツールを導入し、さらには業界全体のデジタル化支援を行うなど、セブンセンスグループは柔軟かつ先進的な取り組みを進めています。

📝POINT📝
私はグループ発足と同じ時期 (2020年2月) に入社したため、当時の様子をよく覚えています。会計の実務と並行してkintoneアプリの作成方法を学び、入社から半年で、顧客資料を管理するアプリを作成しました。その後も、システム部門の社員とともに一つずつkintoneアプリを開発していき、日ごと業務管理ツールが充実していくのを実感しました。業務の効率化が進む中でグループの新たなスタートを間近で感じられたことは、とても貴重な経験でした。
今回のまとめ
セブンセンスグループの業務管理ツールは、業務フローの変化とグループの成長に応じて進化を続けてきました。2000年代のExcel管理から、 「デヂエ」 「BizBase」 などのツール導入、さらには 「Webブラウザで表示できる管理表」 の自社開発や「FileMaker」 への移行と、業務の最適化を目指して試行錯誤を重ねてきました。
特に、ノーコードツールの活用によって、システムの専門知識がない社員でも柔軟に業務改善ができる環境が整いました。また、2019年のグループ発足に伴い法人ごとに業務管理を最適化し、会計事務所向けのkintone運用支援も本格化するなど、組織の成長とともに業務管理の在り方も変化してきました。
ツールの選定は、単なるデジタル化ではなく、業務の実態に合う形で運用することが重要です。今後も、業務の変化に合わせて最適なツールを選び、柔軟な運用を続けていくことが、DX推進の鍵となるでしょう。