会計事務所の導入システムの変遷を振り返る ~業務管理ツール編~(前編)

前回のコラムでは、セブンセンスグループが導入・活用してきたシステムやITツールの変遷を振り返りながら、DX推進における 「ツール選定」 と 「運用方法」 の重要性についてご紹介しました。DXとは単なるデジタル化ではなく、業務フロー全体を最適化することが本質であるという点は、改めて強調したいポイントです。
Contents
はじめに…
ツールの変更は、必ずしも大きな課題解決を目的としたものばかりではありません。むしろ、現場の業務フローや組織の変化に応じた最適化の結果として、自然にアップデートされてきたケースも多くあります。そのため、新たなツールを導入するのではなく、既存のツールの運用方法を見直すことで、よりよい解決策が見つかる場合もあるのです。
今回のコラムでは、セブンセンスグループがこれまでに活用してきた業務管理ツールを振り返りながら、 「ツールの違いが際立つポイント」 や 「どのような運用の工夫がなされてきたのか」 を中心にお伝えします。単に新しいツールへ置き換えるのではなく、どのようにツールを活用し最適な業務フローを構築してきたのか、ツール導入や運用方法の見直しを検討されている方にとって、ヒントとなる情報があれば幸いです。

今回の書記
2020年2月セブンセンスグループ入社
中小企業DX推進研究会 事務局員 Tさん
『入社前の歴史を知ることができそう!ワクワク!』
セブンセンスの業務管理ツール 変遷
業務の管理方法は、企業の成長や業務の変化に合わせて進化していきます。セブンセンスグループでも、効率化と情報共有の向上を目的に、さまざまな業務管理ツールを検討・導入しながら運用方法を模索してきました。

~2005年 「共有Excel」時代
まず、2005年までの業務管理は、Excelファイルを共有して行うシンプルなスタイルでした。当時は分業制が確立されておらず、一つのExcelファイルに顧問先の一覧や作業工程をリスト化しながら運用していました。しかし、社員数の増加とともに、複数人が同時に編集することで発生する予期しないエラーや、データの管理負担が課題として浮上してきました。

📝POINT📝
当時、既に40名弱の社員が在籍しており、事業の拡大も計画されていたため、次なる業務の管理体制を模索していた時期であったようです。
2006年~ Excel運用の問題解決&事業規模拡大に備え「デヂエ」導入
共有Excelの運用で発生した問題解決、そして事業拡大に対応できる業務の管理体制作りを目的に、2006年にはサイボウズ株式会社 「デヂエ」 を導入。デヂエはブラウザ上で利用できるデータベースで、構築も手軽であったため、より安定した業務管理が可能になりました。

📝POINT📝
専門的な業務管理ツールの導入は 「デヂエ」 からスタートしたそう。デヂエは 「kintone」 の前身のようなサービスで、デザイン構築の手軽さが特徴です。このときから 「管理表作成の脱属人化が始まっていたのだなぁ.. 」 と感じました。
2008年~ 通常業務と季節業務で使い分け 「BizBase」と「デヂエ」併用時代
業務管理のさらなる改善を目指して、2008年には株式会社アズベイス 「BizBase」 を導入。グループウェアに進捗管理表の機能が搭載されているため、社員のカレンダーと業務タスクが紐づく、当時としては画期的なツールでした。ただし、確定申告のように短期間で業務タスクが集中する季節業務の管理は 「デヂエ」 の方が利便性が高かったため、通常業務は 「BizBase」 、季節業務は 「デヂエ」 といったように、それぞれのツールの特徴を活かしながら管理方法を最適化。これにより、業務の流れに応じた柔軟な運用が可能になりました。

📝POINT📝
業務ごとで管理ツールを使い分ける発想は斬新だ、と感じました。季節業務の期間がはっきりとしている会計事務所だからこそ出来た環境かもしれませんね。
今回のまとめ
業務管理ツールの変遷を振り返ると、その導入や運用は単なる “デジタル化” ではなく、業務フローの最適化を目的として進化してきたことがわかります。初期のExcelによる管理から始まり、事業の拡大とともに 「デヂエ」 を導入し、さらに 「BizBase」 との併用へと移行することで、通常業務と季節業務の管理を最適化してきました。これらの変遷は、業務の実態に合わせた選択の積み重ねであり、どのツールが優れているかではなく、自社の課題にどのように適応できるかが重要であることを示しています。
また、業務管理ツールの導入は、その時々の課題に対応するだけでなく業務の属人化を防ぎ組織全体の生産性を向上させる、という側面も持っていました。特に、ツールを使い分けながら業務を最適化していく過程では、ただ新しいシステムに移行するのではなく、運用の工夫を重ねながらより良い形を模索してきたことが印象的です。
業務管理ツールの進化はここで終わりではありません。次回のコラムでは、さらなる業務の最適化を目指し、Webサーバーの構築やFileMakerの導入によって、どのような変化が生まれたのかを詳しくご紹介します。業務管理の在り方を見直して、DX推進をより一層進めたいと考えている方にとって、ヒントとなる情報をお届けできればと思います。